ゴールデンウイーク2日目は平ヶ岳を目指しました。 が、これを平ヶ岳の敗退記としていいのだろうか、というくらい手前で引き返すことに…。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 2013年4月29日 平ヶ岳(敗退) 天候:晴れ 装備:(板)クナイスル・ツアーライト59(靴)Xadv6 <コースタイム> (午前) 5:05 山ノ鼻 5:55 二股 6:13〜6:29 奥の二股 8:55〜9:18 稜線(最高到達点) 9:36〜11:04 フタマタ沢右岸尾根 ブナ林周辺滑降 11:23 奥の二股 12:16 山ノ鼻 (午後) 13:55 山ノ鼻 15:12〜15:16 メッケ田代下1660m 15:53 山ノ鼻 昨晩は寒かった。 GWの尾瀬キャンプは4度目だが、テントの外で夕食を食べている日暮れ時から、「こんなに寒かったっけ?」と感じていた。 夜中は寒さでたびたび目が覚め、眠りが浅かった。 辛いテント泊の典型的パターン。 起きる時に水を飲もうとしたらシャリシャリと凍り始めていた。 GWにテント内で水が凍るのは、立山を含めても初めてだ。 寒気の影響で気温が低かった上に、装備のコンパクト化のため、一般的な2mm厚のウレタンを使用したテントマット(いわゆる銀マット)ではなく、片面アルミのビニールシートをテントマット代わりに使用したことも、テント内の温度を下げる原因となったのだろう。 その上、やはり軽量コンパクト化のために防寒具を全体に薄めにしていたことも裏目に出た。 どうせ寒くて眠れないのならと、早めに起き出す。 2日目の今日は、ここ山ノ鼻を出発して平ヶ岳を登頂した後、大白沢山から景鶴山を経由して見晴のキャンプ場まで、というかなりの長丁場を予定。 そして、最終日に見晴新道から燧ヶ岳の柴安ーに登り、爼ーから御池に滑り降りる、というのが今回の計画だ。 しかし、これは、BCクロカンの機動力を最大限に利用できる、例年のような締まったザラメのコンディションを前提にした計画。 たとえそういうコンディションでも2日目はギリギリ行けるかどうかというくらいの計画なので、降雪直後のコンディションでは…と、出発前から半ば諦めモードである。 それでも、もしかすると平ヶ岳頂上直下の大斜面で新雪滑降ができるかもしれないし、時間切れとなれば適当にテントを張ればいいんだし、と自らを奮い立たせ、テントを撤収して5:05に山ノ鼻を出発する。 本日は快晴。 昨日滑った至仏山が朝日に輝いている。 少しすると、燧ヶ岳の脇からご来光。 猫又川沿いのルートには、年配の山スキーヤーが先行。その先にスノーシューの登山者もいるようだ。 昨日からのトレースがあるが、スキーとスノーシューの踏み跡が混じっていて必ずしも歩きやすくはない。 トレースを外したノートラック部分はクラストしていて、踏んでもほとんど沈まずわずかにへこむ程度で、こちらのほうがむしろ歩きやすいところもある。 トレースを出たり入ったりしながら進んでいく。 BCクロカンでの平地歩きはやはり快調である。 やがて二股に到達し、左俣に進む。 このあたりから先は、雪の少ない年だときわどいスノーブリッジを渡ったり、徒渉地点探しに手間取ったりすることもあるところだが、今年は直前の大雪のおかげもあってか、全く困難はなかった。 二股からわずかで、次の二股に到達する。 私は、いつも、この二股の間の尾根を登り、ススヶ峰に至る稜線に出るルートをとっている。 取り付きは急なのだがそれほど長くはなく、登り切るとなだらかな明るいブナ林となっていて、ルートファインディングも容易なよいルートだと思う。 逆に、間違えてもう一つ先の二股の間の尾根を登ってしまった時には、道に迷って時間をロスし、途中敗退となっていた。 そのため、今回も、このいつもの尾根ルートをたどるつもりだった。 ところが、トレースは猫又川沿いをさらに進んでおり、先行者たちもそちらに向かって行った。 さてどうするか。 効率を考えれば、トレースをたどったほうが圧倒的によい。 猫又川から平ヶ岳に至るルートはいくつもあり、私が予定していた尾根ルートが絶対ではないということも知っている。 しかし、このトレースが平ヶ岳を目指しているとは限らない。 かなり悩んだ末、予定の尾根ルートに行くことにする。 尾根取付の急斜面は、いつものザラメなら、場合によっては板を外し、ツボ足の直登でひと登り、という感じなのだが、今日はとてもツボ足で登れるコンディションではない。 ショートシールを貼って、斜度の比較的緩いところをジグザグに登っていく。 降雪直後とはいっても主に降ったのは一昨日のことなので、それほどのラッセルではないのではないかと思っていたのだが、これが甘かった。 奥まった樹林帯で、昨日の気温が低かったこともあって、雪はまだパウダーの状態を保っており、急斜面ではヒザあたりまでのラッセルとなる。 尾根上の緩斜面に出るまで、いつもなら全く苦にならない登りで、早くもかなり労力を使う。 それでも、尾根上は美しいブナ林で癒やされる。 ブナ林をラッセルしながら、ふと思う。 ラッセルを強いるこの雪は、滑るには最高だ。 尾根の両脇には優美なノートラックの疎林が広がっている。 BCクロカンにはうってつけだ。 だが、さすがに今日の天気では、この雪質は長くはもたない。 滑るなら今が最適だ… かなり心を動かされるが、しかし、今ここで遊んでしまうということは、ほぼ、平ヶ岳は諦めることを意味する。 あれだけ遠大な計画を立てていながら、この時点で敗退決定というのはあまりにも情けない。 思い直して、先に進む。 尾根はブナ林から針葉樹林へと樹相が変わる。 それとともに斜度も若干上がり、ラッセルの負担が増す。 さらに、日射と気温の上昇で湿り気を増した新雪が、団子になってシールにへばりつくようになる。 すっかりザラメスキーの気分だったので、雪団子対策のシールワックスなど塗ってこなかったし、持ってきてもいない。 この巨大な雪団子がかなりの負荷を生み、登りに辟易としてくる。 気分的にはようやくという感じでススヶ峰の稜線に到達したが、この先もトレースはない。 計画通りの見晴までの行動はもう絶望的。 この様子では、いかに標高が高いとはいえ、平ヶ岳にたどり着いたころには、直下の大斜面の雪質もかなり悪化しているだろう。 楽しみにしていたケイズル沢の滑降も、この雪の状況では雪崩のリスクが高すぎてとてもできそうにない。 ここに至って、平ヶ岳は断念して往路を戻り、ブナ林の尾根で遊び回ってから山ノ鼻に戻ることを決断する。 シールを外して針葉樹林帯を滑り降り、戻ってきたブナ林は、やはり先ほどよりは雪が重くなり始めており、パウダーとまでは言いづらくなっているが、まだまだイケる状態。 尾根の西側には、ステップ板で滑り登るのに絶好のメローな斜面が広がっている。 どこでも滑れるような広大な疎林が全面ノートラック、これを今日は独り占めできる。 ザックを置いて、あちらこちらを滑りまくる。 途中、滑っていると前方で褐色の物体が動き出す。 カモシカだ。 私がカモシカを追いかけるような滑りになる。 カモシカ君は、沢を渡って対岸の斜面を登っていった。 こちらの様子を振り返りながら。 たっぷりと滑りを楽しんだら、往路を山ノ鼻に戻る。 平ヶ岳登頂の達成感には比ぶべくもないが、BCクロカンならではの楽しさは存分に味わえた。 さて、山ノ鼻に戻っても、まだ昼だ。 軽量化のために食糧計画まで切り詰めた当初のストイックさはどこへやら、気分はもう弛緩しきっている。 至仏山荘の生ビールとワンタンメンで極楽気分に浸る。 食事の後は、今朝までと同じ場所にテントを張り直し、散歩がてら、ステップのままメッケ田代への尾根をテレテレ登る。 時間切れでメッケ田代までは登らなかったが、シールなしでも十分行けただろう。 この尾根もBCクロカンで遊ぶには良さそうなところだが、この日は一昨日の新雪が潜ってずれない重〜い悪雪となっており、滑るのにちょっと難儀した。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 なお、最終日については新たに記事にするほどのこともないので、ここに追記しておく。 最終日は朝からくもりで、時折ぱらぱらと雨がテントを叩く。 前夜までは、尾瀬ヶ原を横断して燧越えくらいはチャレンジしていこうかという頭も少し残っていたのだが、天候の悪さと、雪のコンディションが未知数で急斜面のある燧越えには不安もあることから、断念。 それでもただ鳩待峠に戻るのは寂しいので、至仏に登ってワル沢を滑っていこうかと登りだしたが、斜面の雪は昨日午後の潜ってずれない雪をさらに重くしたような雪。 また、上部の木はかなり風で揺れており、標高を上げていくとクラストしていることも予想された。 テレマークならまだしも、重荷を背負ってのBCクロカンでそんなところを滑るのは勘弁願いたい。 潔く引き返し、山ノ鼻から鳩待峠へと下山(登りだが)した。 平坦な部分が多い鳩待峠へのルートにはBCクロカンが非常に有効だった。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 予想外の大雪に振り回された今回のGWツアー。 計画の半分も実行できず、残念ではあったが、これはこれでBCクロカンらしさを味わえた、楽しいツアーだった。 BCクロカンによるロングツアーという課題は、来年以降に是非実現したい。 ツアー記録一覧へ |
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後半も、とても楽しく読ませていただきました。 |
na 2013/05/10 22:23 |
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